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甘く、深く、繋がって
第30章 仕事初め
「あ、はい」
振り返ると田中さんが不思議そうな顔をして私を見ていた。
「そんなに楽しみにしてたの?」
「はい」
慌てて頷く動作が大きくなった。そんな私にクスリと笑う。
「じゃあ明日来よっか」
深く聞かれなかった事にホッとして。
「はい」
笑顔で頷き、もう一度店内に視線を移した。
店内の薄暗い闇にじわじわと飲み込まれてしまいそうで、別れ際何時もと変わらなかった拓真さんを思う。

嘘をついたとは思えない。
きっと何か事情があるんだよね?

スッキリしないまま見詰める先で、不意にお店の奥が明るくなった。
「あれ?」
隣の田中さんも気付いたらしく、思わず顔を見合わせる。
続いてキッチンに明かりが灯った。奥から幾つもの荷物を手に現れたのは拓真さんで。トクンと心臓が跳ねた。

良かった……

何が心配だったのか、自分でもよく分からない。でも拓真さんの姿にモヤモヤとした気持ちは消えていた。

拓真さんは一人。キッチンの中で動きながらしゃがんだり立ったり。荷物を整理してるみたい。
「明日からの準備に来たのかな?」
同じ様に拓真さんを見ていた田中さんの言葉に納得する。
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