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甘く、深く、繋がって
第30章 仕事初め
高校の時も啓太の時も、親しい人たちは話すまでもなく何故かみんな知っていたから……
そう気付いたら、ますます緊張してきた。

田中さんしかいないのに……

カウンターの向こう、拓真さんは黙って包丁を動かしていて。静かな店内にリズミカルなその音だけが響く。
「田中さん」
「うん」
「あの、拓真さんと……私」
ドキドキし過ぎて田中さんの目を見ていられない。腿の上で握る自分の手に視線を写し
「お、お付き合いさせてもらってます」
一息に言ってギュッと目を閉じた。
「……」
シンと静かになった店内。拓真さんの包丁の音もいつの間にか止まってる。

あ、れ……
私おかしかった?
間違えた?

何も間違えてないはずなのに、一気に不安になってくる。
恐る恐る見上げると、優しい笑みを浮かべる拓真さんと目が合った。瞬間
「真純ちゃん、可愛いっ!」
横から田中さんに抱き付かれた。
びっくりしたけど
「そんなに緊張しなくてもー」
フフッと笑う柔らかな声に張っていた気持ちが一気に緩む。
「娘の告白を聞く母の気分?私までドキドキしちゃった。」
ギュウッと抱き締めてから腕を解き、ニッコリ笑い掛けてくれた。
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