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甘く、深く、繋がって
第30章 仕事初め
『初恋』と聞いて勢いを増した田中さんは、凄かった……

思い出すと顔が熱くなる。

……克己さんも拓真さんが初恋だって言ってた
当時拓真さんは小学二年生だったって言ってたし、そうだったとしてもおかしくはないけれど……

……

嬉しいのと照れくさいのと……

丁度落ちきった砂時計に、拓真さんが紅茶をティーカップに注いでくれる。その手元をじっと見ていたら、ティーポットを置いた左手が伸びてきた。
「どうしたの?顔、赤いよ?」
そっと触れてくる長い指。そのまま頬を包まれて。
首を傾げて覗き込んでくる、甘やかな眼差しに心臓が跳ねた。
「たっ拓真さん、初恋って……」
思わず考えてた事がそのまま声に出てしまい、ますます顔が熱くなる。
「そうだよ。俺の初恋、マスミちゃん」
フフッと笑って拓真さんが右手をカウンターに付いた。
「今でも思い出せるよ。泣いてたマスミちゃんをどうやって泣き止ませたのか、その後二人で何をして遊んだのか……」
少し眉の下がった切ない笑顔。

……私、泣いてたの?

「マスミちゃんの泣き顔も笑顔も、全部覚えてる」
見詰め合ったまま、そっと唇が重なった。
「……忘れらんない」


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