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甘く、深く、繋がって
第30章 仕事初め
少し掠れた拓真さんの声。
数時間に過ぎないだろうその思い出を、拓真さんが大切にしてくれているのが伝わって、キューッと胸が締め付けられた。
頬を包んでいた左手が後ろ頭に滑り、また唇が重なった。チュッと音を立てて吸い上げて、緩んだ隙から舌が滑り込んでくる。舌先を擽られてゾクゾクした。

そんな素敵な時間を私は覚えていない。どんなに振り返っても思い出せなくて、泣きたくなる。
「んっ……拓真さん」
「うん」
深まるキスの合間に名前を呼んで
「連れてって」
「ん?」
拓真さんの首に両手を回す。
「私を、その公園に……連れて行って下さい」
「…………うん」
拓真さんが私の腕を解き、スツールから立ち上がった。私を見下ろし、ふうっと和らいだ目元。優しい笑顔にまた、胸が締め付けられる。
「一緒に、行こう」
拓真さんは私の頭を胸に引き寄せて、包むように抱き締めてくれた。

あったかい……

胸にくっついた耳に直接伝わる拓真さんの鼓動。力強い響きに愛しい想いが込み上げてくる。大きな背中に腕を回して縋り付いた。
互いの身体を強く抱き締め、幸せを噛み締める。


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