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甘く、深く、繋がって
第2章 遭遇
そっと抱えられ、植栽の並ぶ石段に座らせてくれる。
「タクシー呼ぶからちょっと待ってて」
フワリと笑って立ち上がる。
「いえっ、あのっ、大丈夫です!」

彼は危うくぶつかりかけた人。
こんな風に親切にしてもらうなんて、申し訳ない。

「それ、大丈夫じゃないと思うよ」
「……はい?」
振り返って足を指差された。
「明日、ちゃんと病院行きなね」
「……はい」
頷いた私にニコリと笑って車道の方へ歩いてく。
背の高い後ろ姿。
タクシーを拾おうとしてるだけなのに、それさえも様になる。

世の中にこんなに格好良い人、いるんだ……

ボーッと見惚れていたら、彼がこちらを振り返った。
私を見てふぅと目を細める。甘くなった眼差し。

あ……

ギュッと心臓を掴まれた。
早まる心拍。

でもすぐに彼の視線は車道に戻る。
その横顔をもっと見ていたかったのに、五分と待たずタクシーが目の前に停車した。

軽い足取りで戻って来る彼。私を抱き上げる様にして立たせ、そのまま左側に回ってタクシーに乗るまで支えてくれた。

これで、お別れ……

そんな風に思っていたら
「ね、詰めて」
耳元で小さく囁かれた。
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