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五十嵐さくらの憂鬱。
第1章 …1
光輝とつきあって、そろそろ1年が経つ。
決して仲が良いわけではないが
悪くもない。

一緒にいれば楽しいし、
喧嘩はいやだけど、
1つ年上の光輝がさくらを論破してたしなめる形で
いつも腑に落ちないまま終わる。

最近は喧嘩が増えてきて
その度になにやらうまく言いくるめられて終わっている気がしていた。


そして、最大の問題は、身体の相性だった。

「……はぁ…」

ため息を吐いた瞬間、背中をどんと叩かれて
さくらは一瞬むせた。
そんなさくらの顔を覗き込んだのは、
仲良しの小春だ。

「どーしたの、浮かない顔して!」
「……はるちゃんーーー!」

さくらは小春にがばっと抱きついた。

「あらあら、だいぶ沈みぎみモードね?」

よしよし、と頭を数回ポンポン叩くと、
小春はさくらの隣に座り込んで
「で?」
と心配半分、期待半分の顔をした。


こんな事、話していいのだろうか。
さくらはあまりにもナイーブな問題なだけに
一瞬ためらったが、
それよりも早く小春がさくらのほっぺをつまんだ。

「はーん。さては、彼氏のことだ?」

図星なだけに、さくらがうっ、と息を詰まらせると
小春はさくらの長い髪の毛をくるくると指の先にまきつけて、
にんまりする。

「その顔はずばり、えっちのことだ?」
「な、なんでわかるの!」

当然、という顔をして、小春はさくらの毛を指から離した。
椅子を近づけると、
周りを気にして声のトーンを下げる。

「なになに、えっちの何が問題なの?
大きすぎ? 小さすぎ? それとも、マニアック?」

そのどれも違うことを首を振って告げ、
しばらく考えてから、

「あのね……い、いけないんだ、よ…ね」

ぼそりと伝えた。
そのさくらに、小春がきょとんとする。

「……1年だよね、つきあって」
「うん」
「……週に、何回やってるの?」

小春の質問に、さくらは今度こそ大きく息を吐いた。

「はるちゃん、週どころじゃないよ」
「え。なにそれ毎日?」

悲しくなってきて、さくらは眉根を寄せた。


「……月1だよ」


えー!という小春の声が食堂中に響き、
さくらはあわてて小春の口を押さえた。


小春が驚くのもわかる。
さくらと光輝の家は歩いて15分。
会おうと思えば毎日だって会える。

それなのに、今のさくらと光輝は
月に会って3回、えっちは月に1回が限度だった。
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