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あやかし姫の蜜事 ~巫女の夜伽は人ならざる者と~
第1章 蜜事・一 毛羽毛現の髪之助(はつのすけ)
先代のあやかし姫である母を病気で亡くした暦(れき)は、迷わずその肩書きと神社を継いだ。
巫女の仕事とは、全国各地の妖怪を鎮める事だけでなく、妖怪達の欲を一身に受け止める事だった。
恥辱に苛まれながらも、甘い快楽に喘ぐ日々……
それでも、自分に課せられた使命だと割り切って毎日を過ごしていた。
… … … …
ある日、社の中を掃除していた時の事だった。
「……ん?」
御神体である鏡を拭こうと持ち上げた際、鏡の後ろに細い木箱が置いてある事に気付いた。
鏡は幅30cm程で、普段は置いたまま拭くため、隠されたように後ろに置いてあった木箱に気付かなかったのだ。
偶然見付けたその木箱は、まるで時代と共に忘れ去られたかのような古めかしさを纏っている。
「…………」
暦は鏡を傍に置き、その木箱に手をかけた。
どうやら、上質な桐の箱のようだ。手触りは滑らかで、木特有の毛羽立ちもない。長い年月を過ごしているのだろうが、保存状態が良かったのだろう。
そんな箱を目の前にして、中身が気にならないはず が無い。
暦は蓋に手をかけ、そっと、上に持ち上げた。
中身が、あらわになる。
「っ……」
箱の中身を見た瞬間、暦は小さく息を飲んだ。
予想と違う物が入っていたのだ。
暦は、箱の細さからして、扇子もしくは簪等が入っていると想像していた。
しかし、実際は想像と違い、不気味で生々しい物が収められていたのだった。
黒々とした光沢を持つ人間の毛髪が、きちんと纏められて入っていた。
「……あれ、これって……」
気味悪そうにその髪を見ていた暦の脳裏に、幼い頃の母の言葉が蘇ってきた。
『いい? 暦。貴女はこのお社を継いで、あやかし姫としてこの世の平穏を守らなくてはならないのよ。それを肝に銘じて、これからも修行に精進するのよ』
『はい、お母さん』
『よしよし、いい子ね。なら、次はこのお社に眠る御神体について教えてあげるわね』
『御神体? 鏡の事?』
『いいえ。このお社の本当の御神体は、初代あやかし姫の黒髪だと言われているのよ』
『どうして髪の毛なの?』
『初代あやかし姫は、自分の命を捧げる覚悟でこの神社を建てた。だから、同じく女の命とも言える髪の毛を捧げたそうなのよ。当時、髪は女性にとって命の次に大切な物がだったからね』
『髪の毛が神様だなんて、変な感じ』
巫女の仕事とは、全国各地の妖怪を鎮める事だけでなく、妖怪達の欲を一身に受け止める事だった。
恥辱に苛まれながらも、甘い快楽に喘ぐ日々……
それでも、自分に課せられた使命だと割り切って毎日を過ごしていた。
… … … …
ある日、社の中を掃除していた時の事だった。
「……ん?」
御神体である鏡を拭こうと持ち上げた際、鏡の後ろに細い木箱が置いてある事に気付いた。
鏡は幅30cm程で、普段は置いたまま拭くため、隠されたように後ろに置いてあった木箱に気付かなかったのだ。
偶然見付けたその木箱は、まるで時代と共に忘れ去られたかのような古めかしさを纏っている。
「…………」
暦は鏡を傍に置き、その木箱に手をかけた。
どうやら、上質な桐の箱のようだ。手触りは滑らかで、木特有の毛羽立ちもない。長い年月を過ごしているのだろうが、保存状態が良かったのだろう。
そんな箱を目の前にして、中身が気にならないはず が無い。
暦は蓋に手をかけ、そっと、上に持ち上げた。
中身が、あらわになる。
「っ……」
箱の中身を見た瞬間、暦は小さく息を飲んだ。
予想と違う物が入っていたのだ。
暦は、箱の細さからして、扇子もしくは簪等が入っていると想像していた。
しかし、実際は想像と違い、不気味で生々しい物が収められていたのだった。
黒々とした光沢を持つ人間の毛髪が、きちんと纏められて入っていた。
「……あれ、これって……」
気味悪そうにその髪を見ていた暦の脳裏に、幼い頃の母の言葉が蘇ってきた。
『いい? 暦。貴女はこのお社を継いで、あやかし姫としてこの世の平穏を守らなくてはならないのよ。それを肝に銘じて、これからも修行に精進するのよ』
『はい、お母さん』
『よしよし、いい子ね。なら、次はこのお社に眠る御神体について教えてあげるわね』
『御神体? 鏡の事?』
『いいえ。このお社の本当の御神体は、初代あやかし姫の黒髪だと言われているのよ』
『どうして髪の毛なの?』
『初代あやかし姫は、自分の命を捧げる覚悟でこの神社を建てた。だから、同じく女の命とも言える髪の毛を捧げたそうなのよ。当時、髪は女性にとって命の次に大切な物がだったからね』
『髪の毛が神様だなんて、変な感じ』