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~ 愛しい人へ ~
第3章 ~ 私を想う ~
10年以上、つき合ってきたけれど。


樹ちゃんの……


悪いところ。


面倒な時や考えたくない時の


「しかたない。」


わたしは。


しかたない……じゃなくて、だったらどういたらいいのか……


ふたりで、


少しでも


なにかちょっとでもいい方法を考えたいと。


ギクシャクしたまま、


樹ちゃんのお昼休憩の時間が、


終わりに近づいてきた。


食事の後、


エスカレーターで降りている時


「俺は、来てほしいんだけど。」


ポツリと、独り言のように


樹ちゃんが言った。


わたしは、なんて答えたら


いいのかわからず、


黙ってしまった。


そして、樹ちゃんが


「じゃあな。」


と、左手をあげて、


駅とは逆に歩いていった。


人が多かったけれど、


わたしは、樹ちゃんの背中を


見送った。


もしかしたら、


樹ちゃんの背中を見送るのは、


最後になるかもしれないと。


樹ちゃんの背中は、


人混みに消されてしまった。


わたしの、


この時の予感は的中した。


ちょっとした「ズレ」


と、


すれ違いで


わたしは、もう


二度と…………


彼の背中を見送ることは


なくなってしまった。


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