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~ 愛しい人へ ~
第3章 ~ 私を想う ~
このまま……


さよなら


は、書きたくなかった。


だから、


『今日も、暑いですね。


 咳は、まだ止まっていないようですね……。


 人前でお話しする機会が多いので、


 なかなか治らないのかもしれませんね。


 早く治るといいですね。


 お大事に…。』


わたしの精いっぱいの強がり。


きっと、返信はこないはず……。


深呼吸した……。


もう一度、考えた。


本当に、これでいいんだよね……。


彼との、12年間が終わっても。


わたしは、首を横に振った。


終わりたくない……。


だけど、疲れてしまった。


逢えないからこそ。


大切にしたいものが、たくさんある。


だけど、


それが、


わたしの「それ」と彼の「それ」に


大きな隔たりがある。


奥さん以外の他の人のこと、気にし続けるの?


彼に抱かれるたび、せつない想い……をし続けるの?


きっと。


ここで、また今までと同じ時間を紡いでも


同じ悩みで


わたしは、きっと悩み


そして


こんなふうに「別れ」のメールを送って


彼を振り回すだろう。


「別れてもともだち」


今なら、


多分、


この言葉は守られるかもしれないけれど、


こじれてしまって、大嫌いになって


別れてしまったら……。


もういい……、


気持ちは変わらない。


好きだけど、


さよなら


でいい……。


わたしは、震える指先で


送信ボタンを押した。


画面に写る……


「送信しました」の文字。


そこに、一粒の……涙がこぼれ落ちた。


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