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引き裂かれたroyaume
第1章 引き裂かれた二人
海洋の片隅にぽつんとある小国リテスキュティージは、冬の存在しない島国だ。
春は長い。ほぼ一年中、甘やかな香りがそよ風にとけてたゆたっていて、青々と繁る緑葉が、蒼穹から降り注いでくる淡い黄金色を浴びて、瑞々しい色をまとう。
リゼット・バシュレは、王宮の回廊に張り巡らせてあるガラスの窓から、荒廃した城下町を見下ろしていた。
ついこの間まで色とりどりの花が咲き乱れていた草原は焼け焦げて、商家の並んだ町並みは、瓦礫の海だ。あちこちに負傷者が見える。身を寄せ合う、痩せこけた親子の姿もあった。
砂の城は壊れやすい。こんな光景、二ヶ月前まで想像もつかなかったものだ。
「リゼット」
後方から、透明感あるアルトの声が聞こえてきた。
すぐ側に、リゼットと同じ軍服に身を固めた女性がいた。
王宮付きの軍事隊、エリシュタリヴ・オルレの隊長、エメ・カントルーヴだ。リゼットが長年仕えた軍人だ。