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引き裂かれたroyaume
第1章 引き裂かれた二人
リゼットは目を伏せたまま視線を窓に戻す。
極力、視界にエメを入れたくなかった。
ホワイトブロンドの短髪に、ほんのり翠を帯びた碧眼、頬は白亜の如くきめこまやかでまばゆくて、鍛練された長身は、柔らかな線を描きながらも頼もしい。
エメは、その中性的な顔つき、雰囲気からか、一目で女性と分かりづらい人間もいるようだった。
肩に、エメの腕が絡みついてきた。
リゼットの、この地方の人間にしては色素の濃いブロンドの長髪の先が、腰の近くでさらりと揺れた。
「もう少し……距離を置いて。誰かに見られたら」
「皆、知ってるじゃん」
「──……」
「東部は敗けた。君はエリシュタレヴ・オルレを抜けろ」
「言われなくてもそうするわ。私が不甲斐ないばかりに、ごめんなさい」
「言いたいことは、それだけ?」
「…………」
リゼットは、エメの腕から抜け出して、きびすを返す。
目が合うだけで今は苦しい、いつも一緒にいた上官を、見つめる。