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異常性愛
第29章 相克
広大な一階フロアには、何度も折り返した長い順番待ちの列が幾筋もでき、診察や処方箋を待つ患者でごった返していた。
ひしめき合う外来患者をかわしながらエレベーターに辿り着き、最上階のボタンを押した。
最上階でエレベーターを降りると、ロビーの喧騒が嘘だったかのようにシンと静まっていて、私の足音だけが廊下に響いた。
亭主の名札が掛かったドアをノックすると、スーツを着た美しい女が私を出迎えた。
やけに色気のある男好きのする顔立ちで、笑みに含みがある。
この女もいずれ酒池肉林の宴で醜態を晒すのだろう。
スーツの中身を想像させるその美しい秘書は、慎ましく頭を下げて応接スペースに私を案内した後、私が来たことをインターホンで亭主に伝えた。