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第29章 相克

　　　
『でも私は違います。
　大輔さんが好きです。
　ずっと居たいんです。
　エッチが無くてもいい。』

『真美ちゃんは人妻だよ。
　それに先生は真美ちゃんを想ってる。

　もし僕と恋愛をするなら、
　僕も真美ちゃんも
　一度 一人にならなきゃね。
　
　それが出来る？
　僕には出来ない。』

私の言葉に真美は俯き、目を閉じた。
自ら望んで亭主の妻となった真美にとっては嫌な質問だろう。

私は真美に嫌忌される態度とったことは一度も無い。
あの家で暗愁する真美を助けたかったし、前を向かせてやりたかった。
今もその気持ちは変わらない。
目の前の真美を悲しませているのは私だが、傷ついたのなら背中をさすって慰めてやりたい。
そんな矛盾を超えた感情が、私の決意を揺さぶっていた。