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第29章 相克

　　　
だが私は今日いい人であってはならない。
同情や慈悲が私と真美の行き先を狂わせる。
真美に現状を受け止めさせることが私の目的だ。
嫌われて帰るならそれでいい。

『どうしよう、私・・。』
　
『先生いい人だよ。』

『主人？』

『うん。
　いい人だよ、あの人。
　僕にとってもオヤジみたいな人だ。
　ただの悪人じゃない。

　お金持ちじゃない素の先生に
　思いっきり甘えるといいと思う。
　僕なんかより、ずっと
　真美ちゃんを大事にしてくれるよ。』

『できなかったら・・・。』

『真美ちゃんの結婚は
　失敗だったってことになるね。
　僕と真美ちゃんの出会いも
　無意味になる。』

『無意味には・・・
　したくありません。』