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異常性愛
第31章 羽化
波乱の続いた去年の夏から約一年が経った。
昨年暮れに優子と別れ、私はこの夏 父親になった。
慌しい一年だった。
あれから一度だけメールが届き、優子はシンガポールの投資顧問会社にヘッドハンティングされ好待遇で移籍したということだった。
実に優子らしい華やかな転身で、その時ばかりは私も祝辞を返信し、優子が世界中で活躍してくれることを祈った。
優子は自らの矜持を取り戻し、辛い別れをものともせず目の前の階段を上り続けている。
人はその人らしさを輝かせる時が一番美しい。
満面の笑みを湛えた優子の姿を想像し、心底嬉しかった。
あの時、別れてよかったと思う。
優子の才能と運を、私が潰してしまっていたかもしれない。
今でも「通知不能」と表示される無言電話が時々あるが、私が「もしもし」と言うとプツンと切れる。
私はその先を想像せず、心の中で¨頑張れ¨とだけ呟いている。