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異常性愛
第8章 掌
    
『あぁもうはいはい、いきますよ。あきちゃん、お願いね。』

『あ、おかぁさぁん・・・。』

『そうだ。』

晶子の呼びかけを無視し、母は言葉を続けた。

『塾の月謝と修学旅行の積み立て、それ、テーブルに置いてるから。忘れずに持ってってよ。遅くなってごめんね。』

早口で告げると母は玄関を出て行った。
途端に家の中はしんと静まり返る。
薄暗い玄関に母のスリッパが重なっていた。

晶子は階段を降り、台所のテーブルに置かれた封筒を手にした。
中を確かめると数枚の紙幣と小銭が入っている。

納期はとうに過ぎていた。
期日までに支払えなかったことは年頃の晶子には格好の悪いことだった。
ここのところ遅延や滞納が増え、毎日のように封筒が届く。
両親は一切口に出さないが、生活に困窮しているのを高校生の晶子も薄々感じていた。

-----(おかあさん、ありがと。)

封筒を胸に抱き、晶子は両親に感謝した。



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