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異常性愛
第8章 掌
   
晶子の父はいくつかの事業を展開していた。
地元で有名な事業家だったが、数年前の日銀の総量規制に端を発する、バブル経済の崩壊に巻き込まれ、資産を失っていった。
晶子が高校に通い始める頃、自宅を処分し、叔父が都合した現在の借家に移った。
それでも両親は明るく振舞い、家族の絆はその後も変わることはなかった。

公立高校に通う晶子は、陸上部に所属し短距離のエースとして活躍していた。
締まった体型にキリッとした小顔を乗せ、健康的な日焼け肌を纏ってトラックを駆ける姿に、学内にはファンも多く、放課後のアイドルと異名を冠するほどの人気者だった。

学業にも精を出す生真面目な生徒で、嫌味のない性格は男女を問わず愛される存在だった。
おしゃれに敏感な年頃だったが、苦境の生活は晶子にそれを許さなかった。
そのエネルギーを晶子はスポーツで昇華させ、高校生活を充実させていた。

快然たる学生生活を過ごし、その上 予備校にまで通わせてくれる両親に晶子は感謝していた。
多少の苦難はトラックを走れば忘れることができた。

今日の両親の外出が金策であることも、物分りの良い晶子は察知していた。


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