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異常性愛
第8章 掌
そのまま椅子にドスンと腰を降ろし、紙袋をテーブルに置いた。
『なにこれ?いいにおい。』
『わからん、おばさんにもってけといわれただけじゃ。中身まではしらん。』
叔父はヘラヘラと笑みを浮かべ、晶子を見つめた。
幼い頃からよく知る叔父は父の長兄で、いつも晶子を可愛がってくれていた。
この借家も叔父が知人から手配したもので、格安の家賃を叔父が支払っているのも晶子は知っていた。
叔父が訪れるたび母が丁寧にもてなしているのは、金銭的な援助を受けているからだった。
紙袋の中は叔母がこしらえた煮付けか何かだろう。
甘酸っぱい香りが漂っている。
ただ、いつも玄関から入ってくるこの叔父は、今日に限って両親が外出してから、ほとんど間を空けず勝手口から現れた。
いつもと違う行動とタイミングに晶子は警戒していた。
正月に親族が集まった際も、この叔父の視線には特別なものがあり、年頃の晶子は五十代半ばの浅黒い小男に、薄気味悪い印象を抱いていた。