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異常性愛
第8章 掌
叔父は晶子にゆっくり近寄り、晶子の肩に手をかけてしゃがみこんだ。
晶子は怯え、小さく息を吸う。
『ええか、あきちゃん。今日のことは誰にも内緒じゃ。お母ちゃんに告げ口しても、お母ちゃんが悲しむだけじゃ。』
畳を見つめ、膝を抱えたまま晶子は頷いた。
『そうじゃ、それでええ。』
叔父は沈黙し、考えを巡らせた。
そして再び晶子に顔を近づけると声に力を込めた。
『もぉおし、あきちゃんがしゃべったら、おじさんはお父ちゃんに貸した金、ぜんぶっ!耳揃えて返してもらうっ。そしたらここにも居れんし、走りも辞めんといかん。あきちゃんさえ黙っててくれたら、おじさんは金もいらん。返さなくてもええんじゃ。お父ちゃんは助かるなぁ。』
自分の立場をこんこんと説かれ、晶子は家庭の苦境を実感した。
自分を蹂躙した叔父を、憎悪しても報復すらできない無力感。
自らの非力さと無知を恨み、晶子の目には涙が溢れた。