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異常性愛
第10章 底流

ここなら女は簡単に服を脱ぐ。

世間知らずの若い看護師など、手間をかけずにモノにできるはずだ。
涼子もここで教授連中と夜通し破廉恥な行為に耽ったのだろう。
それを想像すると、私の中にちょっとした嫉妬が頭をもたげた。

どうしようもない過去への嫉妬心を振り払い、タバコを消して浴室に向かった。
人工大理石の浴槽に湯を張り、服を脱ぎながら、やはり涼子を想ってしまう。

あれ以来、涼子とは会っていない。
あの日の真意を確かめず、ズルズルと時間が経っていたが、涼子に対する想いは単なるセックスフレンドの関係を上回ろうとしていた。

それゆえ意図的に涼子を避けていた。
おまけに涼子の亭主に弱みを握られ、先の動静が読めない状況で危険は犯せない。

睡眠薬のことにも疑問が残っていた。
時折届く涼子からのメールにも仕事を理由に返信を遅らせ、お互いの熱を冷ますことに注力している。

勘のいい涼子は、おそらく私の心境の変化を察知しているはずだ。
このまま時が経つのを待ち、お互いの記憶が瓦解(がかい)することを願うしかない。


浴槽に身を沈めた。

窓から見える空は群青に染まり、夜のとばりが静かに降りようとしていた。




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