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第10章 底流

　　
『よく誘われるのかい？アノ人たちに。』

視線を亭主に向け、もう一度、目尻から真美に視線を戻した。

『はい。二度目です。前は先生の別荘で・・・。』

『じゃ僕の先輩だ。おて柔らかにね。』

真美の髪を撫で、小さく会釈しておどけた。
真美はアゴに指をあて、照れくさそうに唇を噛むと、肩をすくめて私の胸元に視線を落とした。
いじらしく可愛い素振りを見せる真美に耳元で聞いた。

『彼、長谷川さん？先生か、真美さんのお目当てなの？』

真美は難しい顔をした後、思い出したように頷いた。
高収入と将来性があれば真美は誰でもいいようだ。
内緒話をするように、低く小さな声で真美に聞く。

『そうなんだ、脈はあるの？』

『長谷川先生とはまだないんです・・。』

自嘲するような寂しい笑みを見せる真美に可笑しくなり、鼻から息が抜けた。

----（・・・¨とは¨まだない、かぁ。）

『そっか、じゃあ、振り向かせたいね。』

『はい。』

真美は子供のような笑窪をこしらえ、口角をあげた。