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異常性愛
第10章 底流
  
『あの・・・奥様いらっしゃるんですか?』

今度は真美からの質問だ。
真美はこの環境で、私に心を開きつつあった。

『ああ、優しくて僕の世話をしてくれる、かわいい人がひとりいるよ。』

『すてき・・・。そんなふうに奥様のこといえるなんて。』

女遊びの常套句である。
妻を悪く言う男は女に好かれない。

妻帯者と関係を持つ女性の多くは、相手の妻と自分を重ねる。
妻への悪口は、自分を貶める言葉と同じように心に響いてしまう。
実際はその妻から夫を寝取っているのだが、女性はそれを上手に棚の上にしまえるのだ。

『なのに、こんなことしてる・・・悪い旦那様ですね。』

『かわいい真美さんを、ガマンできる男はいないよ。』

真美は満足そうに目を閉じ、長い吐息をついた。
自分への褒め言葉に酔っているのがわかる。
私は真美が構えたミットにボールを投げただけだ。



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