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異常性愛
第12章 独裁者の嘆き
鏡に向かい、普段より幾分濃いめのアイメイクを施す涼子に、ちょっとした苛立ちを覚える。
『なぁアイツらのためにキレイにしてるのか?』
涼子は鏡の奥の私に微笑む。
鼻から息を抜くと、鏡の中の私に涼子は言う。
『違う。あたしのためよ。』
化粧ポーチから数本のリップを出し、やはり彩度の高い色を選んだ。
化粧筆を使い、丁寧に唇に落としていく。
『お面を付けるのよ。これで別人になるの。』
女性の化粧には、気分を高揚させる一定の心理効果があるという。
気分の高揚は不安と緊張を和らげ、何事にも準備が整う。
それは今の涼子にとって戦装束のようなものだろう。
『本当のあたしは・・・ここに置いてく。
あなただって言ってくれたでしょ、
化粧しなくてもきれいだって・・・。
いつもそうやって女の人 褒めるの?』
表情を緩め、涼子は皮肉な笑みを浮かべた。