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異常性愛
第12章 独裁者の嘆き
  
眼鏡を外した長谷川は、蜆(しじみ)のような小さい目を据わらせて私を威嚇する。
やたらに太い眉を段違いに歪ませ、アゴをせり出してわざとらしく舌打ちした。

『あのな、お前みたいな高卒バカが、
 ここにいるのがおかしんだよ。
 ここはセンセー方が来るとこだ。
 場違いなんだよ。』

――――(このやろう・・・。)

長谷川を張り倒してやろうと思ったが、開業医は涼子の首にベルトを巻きつけ長さを調節している。
涼子は開業医に緩みきった笑みを投げかけ、首を差し出していた。

小型犬のような威嚇を続ける長谷川のことなどどうでもいい。
醜態を晒す涼子を取り返したかった。
開業医を留めようと前に出た。

『先生、待ってください!』

『黙れ貧乏人!向こうへ行ってろ!』

私の前に長谷川が立ちはだかり、口を挟む。

『長谷川さん、アンタ 涼子に惚れてたんだよな。ほんとにこれでいいのか?』

『ああ、お前、俺に説教するのか?俺を誰だと思ってるんだ?』

権威をちらつかせ、私を押さえ込もうとする長谷川。
私は腰にあてた手を拳に変えた。

私の選択肢は涼子を奪うか、この二人を退場させるかのどちらかだった。



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