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異常性愛
第12章 独裁者の嘆き
確かに亭主の言い分は間違ってはいない。
だが全てではない。
確かめ合った愛は、そんなものではなかった。
あの幸福感はこんな遊びでは味わえない、
計り知れぬ深さと強さがあった。
『キミはそういう力を否定したいようだが、
過去に何かあったようだな。
父君に虐待されたか。まぁ詮索はせんが、
それに固執する限り
キミは一生それに苛まれた人生を過ごすことになる。
なぜなら権力はキミが思うより、遥かに強くて賢いからだ。
おまけに支配される者はそれを望んでいる。
支配されることで気楽に生きたいわけさ。ほほほ。
広い道路には白線が引いてあるだろ。あれと同じだよ。
真っ直ぐに走ろうと思えばあれがいるんだよ。
無きゃ大惨事で皆死ぬ。
まぁそんな時でも医者は儲かるがね。ほほほっ!』
私は子供の頃を思い出していた。
幼い私の意思は尊重されず、傲慢な父の傾倒した考えを押し付けられた。
何も知らない未熟な私は精神的に支配されていた。
そして突然理由も告げられず、私の前から母は消えた。
誰に慰められることも無く、打ちひしがれた記憶が私の心を埋めている。
父から逃げるように早くして社会に出たが、父を凌ぐ力は次々に現れた。
周囲は疑問持たず、それに並んで付き従い、ぞろぞろと捕虜のように行進する。
私はそのもっと上にあるものは何なのか、何がそうさせているのかを知りたかった。