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異常性愛
第13章 塊
『おお、助かるよ。』
そう言ったものの、後部座席は商売道具や宿泊用の荷物で満杯だった。
トランクにもカタログ類が詰まっている。
だが、一度受けた頼みは断れない。
私は涼子に頭を下げた。
『ごめん、先に旦那さん駅まで送ってくる。
すぐに戻るから、カフェで何か食ってて。』
涼子は目を丸くして驚いた表情をみせ、私に何か言おうとしたが、目を閉じてぐっと堪え、無言で頷いた。
『気をつけてね。急がないで。』
思い直した涼子は、いつも通りの優しい眼差しに戻り、サイドブレーキにかけた私の手を 幾分強く握った。
涼子はキッと亭主を睨み、助手席を亭主に譲ると、混雑したロビーに消えて行った。
助手席に乗り込んだ亭主は『悪い悪い』と言い、慌しくシートベルトを締めると、右手を伸ばした。
『よし!出発しんこぉ!』
思わず噴き出してしまった。
『ん?どうした?おかしいか?』
『いえ、なんでもありません。行きましょう。
お宅で流行ってるんですね、それ。』
エントランスの混雑も収まり、私はクルマを出した。