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異常性愛
第14章 宿怨
首をかしげながら優子は内ポケットから薄いケースを出し、私に名刺を渡そうとする。
『あぁいやいや、俺にならいい。いらない。』
私は手首を振って断った。
自分が名乗っていないのに名刺など受け取るわけにいかない。
浮気の証拠になっても厄介だ。
『どして?』
『優子でいい。どこかの優子でいいんだ。』
にやっと優子は笑い、ケースを内ポケットにしまう。
ボタンを外したスーツの中の、はち切れそうなほどシャツを膨らませるバストが目に入った。
目のやり場に困り、私はうつむいてズボンのポケットに手を入れた。
『おうちまでどのぐらいなの?』
『二時間ぐらいかな。』
優子は腕時計を見た。
高価そうな時計だった。
鞄にもLとVが重なったロゴが、やかましくプリントされている。
優子はホテルとは逆方向の山を指差した。