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異常性愛
第16章 萎凋
『そういう言い方は良くないよ。』
『そうか?雅美は大事にされてるからじゃね?』
『うん。でも良くない。
親がなかったらここにいないんだよ。あたしたち。』
『雅美ンちに生まれたかったよ。』
『違うよ、そんなじゃないよ。・・・付いてるよ、ご飯粒。』
少年は舌を伸ばして、口の周りを一周させた。
それでも届かない飯粒を、雅美は摘んで自分の口に入れた。
弁当を平らげた少年は満足気な笑顔を見せる。
雅美はその笑顔が好きだった。
普段から周りを威嚇する怖い印象の少年が、時折自分に見せる崩した笑顔は雅美だけのものだった。
『あぁごちそうさま。ちょっと水飲んでくる。』
パンッと手を合わせた少年は、踊るように公園の水飲み水栓に走った。
蛇口に口をやる少年が夕日を浴びて黄色く輝く。
雅美は弁当箱を片付け、包みをたたみながら、少年とのひと時を噛みしめていた。
ズボンの尻で手を拭きながら少年がベンチに戻ってくる。
口の回りを濡らしたままの少年に、雅美はポケットのハンカチを差し出した。