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異常性愛
第16章 萎凋
少年はボールに足を乗せると手前にヒョイと引き、足の甲にボールを乗せ、そこにしばらく留めた。
そこからポンポンと小さく宙に浮かせると、胸や肩に当てながら一度も地面に落とさず、最後にポーンと頭上まで蹴り上げたボールを、屈んだ姿勢で首の後ろにキャッチした。
曲芸のようなボール捌きに、雅美は感心し手を叩いた。
『すごいね。すごいすごい。じょうず。』
『だろ?実は巧いんだぜ俺。へへ。』
『なんでサッカー部辞めたの?もったいないじゃん。』
『一年ン時に試合でぶん殴っちゃった。
それとタバコもバレたから。もう来るなってさ。ははは。』
暴力事件や喫煙は嘘ではなかったが、本当は試合のたびに出費する交通費や遠征の宿泊費が払えないからだった。
『そうなんだ・・・。でも高校入ったらやるんでしょ?』
『やりてぇなぁサッカー。やれたらいいな。
バイトしなきゃ喰ってけねぇし。できっかな。』
『あたしバイトしたげるよ。』
世間知らずの十五歳の少女は、変わりに自分が働けばなんとか出来ると思ったのだろう。
なによりも雅美は少年にサッカーをさせたかった。
グランドを走り回る少年を¨あれが私の恋人だ¨と自慢したかった。