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第17章 つづら織りの海

　　
戸籍をあたろうと、生まれた育った町の役所に出向いた。
実家を追い出されて転出の申請に一人で来た、それ以来だった。
役所までの道路は拡幅され、銀杏並木の美しい通りに変貌していた。
建て替えられた庁舎に昔の名残はどこにもなかった。


市民課の窓口で番号札を取り、他の来庁者と共に長椅子に座った。
各窓口には多くの人が待っていたが、窓口の職員は特に慌てる様子もなく、ここにしか流れない緩慢な時間を過ごしながら、自分の番号が呼ばれるのを待った。


足元のタイルカーペットの市松模様を目で追っていた私の視界に、ピカピカの紳士靴が行きかけて立ち止まった。

『おおぃ、久しぶり。』