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異常性愛
第19章 変わらないもの
その小屋の前にしゃがんで辺りを眺めた。
どこにでもある神社の佇まいが目の前にあるだけで、記憶の糸口は掴めない。
『あっちは?行ってみようよ。』
晶子に促され、私達は本殿の裏手にまわった。
大きな樫の木があった。
その樫は大きすぎて根が地中で収まりきらず、一部が地表に露出し そのあたりの地面を歪めていた。
思い出した。
『あ、俺これで転んだんだ。』
当時、父が肩入れしていた我が家の宗派では、神社の鳥居をくぐると仏罰が下るとされていて、私と母は鳥居をくぐれず、境内を囲う玉垣を乗り越えてここに入った。
この樫の幹が大きすぎて、玉垣を途中で寸断していたはずだった。
樫と玉垣とに出来た隙間から、母が敷地に入っていた記憶がある。
晶子の手を引き、樫の木の裏側にまわった。
玉垣はそこで途切れていた。
『やっぱりそうだ。行こう。』
『え?ここから?』
『ああ、ここからの道しか知らないんだよ。』