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異常性愛
第19章 変わらないもの
広い屋敷には古びた瓶(かめ)や鉢植えが無造作に置かれ、植栽には大きな松が枝を伸ばしていた。
それをくぐり、母屋の入口にたどり着いた。
私が大人になったせいか、屋敷の印象はだいぶ変わっている。
当時は母屋から門までの庭を、学校の運動場ぐらいに大きく感じていた。
農機具小屋の戸がキィと開き、少し腰の曲がった老婆がふらふらと出てきた。
私と晶子は慌てて頭を下げた。
小屋の戸を締め、振り向いた老婆は私たちをじっと見た後、細い萎(しお)れた声で私たちを訊ねた。
『農協さんか?』
『あ、いえ違います。
あの、君枝さんに会いに来ました。』
『はぁ?君枝か。はて、そっちにおらんか?』
目も耳もしっかりしている元気な老婆は、私の祖母だった。
幼い頃、私は祖母をバアチャンと呼んでいたが、親しい呼称で呼ぶにはあまりにも月日が経ちすぎていた。