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異常性愛
第19章 変わらないもの
母だった。
すぐにわかった。
汲み取り便所で、後ろを向いて気張る私に近づけた、その顔だった。
突然現れた私をじっと見つめ、母は私の名前を口にした。
『倅って・・・え、 大輔?』
『・・・はい、大輔です。』
『ほんとに、 大輔?』
『・・はい、お久しぶりです。』
母は抱えていたヘルメットを足元に置き、白い長靴をぽこんぽこんと鳴らして私に近づいた。
間近に見る、母の目尻にはシワが増えていた。
老いた母の顔を見て、別れた頃の母の顔を鮮明に思い出した。
目の前に立つ小柄な年配女性。
それは紛れも無く、私の母だった。
小さな母が私を見上げている。
奥まった目を潤ませ、キュッと結んだ唇を震わせていた。
『覚えてますか?』
母は私のどこかに面影を見つけたのだろう。
私の問いに、胸が詰まり声を出せない母は『うんうん』と深く頷くことしかできず、顔を振る度にふっくらとした頬に涙をつたわせた。