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異常性愛
第19章 変わらないもの
『会いに・・来てくれた・・わたしに。』
母は両手で顔を押さえ、泣いた。
大きく息を吸うと声を出して、また泣いた。
私は泣くまい、と決めていた。
絶対泣くものか、と。
ただ、老いた母の薄くなったつむじの、
その細い髪の弱々しさ・・・。
食い縛っていた私は、
泣けて泣けて、涙が止まらなかった。
三十年近い年月の長さを、伏せる母のつむじに見た。
その間、母は悲しみ抜いた。
母のそのつむじは、母の深い悲しみを私に伝えた。
二十数年前に母を求めた幼い私が、私に言う。
なぜ、もっと早く行かなかったのかと。
なぜ母を一人にしたのだと。
私は幼い彼に、言い訳することができなかった。
母を捜すことなどいくらでも出来たのに、
私はそれを怠り、つまらぬ意地を張った。
幼い彼と母の間に立ちはだかったのは、
私だった。