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異常性愛
第19章 変わらないもの
薄暗い仏間で、祖父の遺影に手を合わせた。
全面に金箔が施された仏壇は、陽光を鈍く滲ませていた。
私の実家のものとは違う本尊が安置されている。
茶を運んできたのは晶子だった。
大きな欅(けやき)の座卓に、そっと湯飲みを置くと晶子は微笑んだ。
『よかったね。ほんとに、よかった。
あたし、ついてきてよかった。
お母さんとの再会に立ち会えたなんて。』
『アキのおかげだよ。ありがとう。』
『ゆっくり話してね、
あたしお婆ちゃんに習うの。小芋サンの。』
着替えた母が仏間に戻った。
会釈して立ち去ろうとする晶子に母は声をかけた。
『晶子さん、ごめんね。疲れてるでしょ。』
『いいえ、大丈夫です。しっかり習って帰ります。』
『お婆ちゃん、嬉しいみたいで・・。
ほんとに、ごめんなさいね。』
『いえいえ、気になさらないで・・。』
晶子が祖母の待つ台所に行くと、母は居住まいを正した。
その雰囲気は先ほど号泣していた母と違い、凛としたものがあった。
今日まで節度ある日々を過ごしてきたのがわかる。