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異常性愛
第21章 ギブ・アンド・ギブ 前編
群れて歩く同僚達を見送り、少し静かになったオフィスパークのベンチでタバコに火をつけた。
夏の暑さが嘘だったように秋の風は少し冷たい。
日暮れの早い季節になり、オレンジ色の外灯がベンチに座る私の影を地面に落とした。
苦い煙を吐きながら、私にとって騒々しい季節となった、この夏の出来事を反芻(はんすう)した。
去年の今頃に比べ、変化に富んだ夏だった。
涼子と別れることなど考えもしなかったし、新たな出会いや再会が待っていようとは思いもしなかった。
この先、自分がどう進んでいくのか、来年の今頃、自分がどこで何を考えているのか全く予想がつかない。
もしかすると父親になっているのかもしれない。
人生は何も約束されていない。
それを実感させられた夏だった。