この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
異常性愛
第23章 原石と宝石
社内で気の合う同僚から、私は下の名前で呼ばれる。
同姓の社員が同じ課に二人いて、彼との差別化で自然とそうなった。
発音しやすいのか、目をかけてくれる上司からは「大ちゃん」と呼ばれることもある。
小さな小銭入れから、モゾモゾとお釣を出そうとする女子社員に、私はそれを断った。
女子社員は笑顔で財布に小銭をしまった。
『いつでも言ってくださいね。』
数十円で可愛い女子社員のハートを掴めれば安い投資だ。
『ごめんね。次は俺がお使いに出るよ。』
『またまたぁ、そんなのお願い出来る訳ないじゃないですかぁ。叱られちゃいますよ。』
『なんで?』
『大先輩ですもん。お使いなんて頼めませんよぉ。』
『大は要らないよ。はは。』
『お昼、行かないんですか?』
『ああ、ゆうべ飲み過ぎて。もたれてんの。ありがとね。』
胃を摩(さす)って笑顔で会話を閉め、ショールームの外へ出た。
早くコーヒーを飲みたかった。