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異常性愛
第25章 おまじない

『どうぞ。』
『あぁありがと。ちょっと休憩しようか。』
『ええ。』
しおらしく振舞う真美は、つくり笑顔をみせ、カップに視線を落とす。
小さな溜息がカップの湯気を揺らした。
私の苦手な雰囲気だ。
コーヒーの味がしない。
『あ、あのさ真美ちゃん。』
『はい。』
憂いのある笑顔を私に向ける。
『ここへ来る時に何か持ってきた?』
『何も。』
『何もないの?』
『はい。個人的なものは、
少し買い揃えましたけど。』
『身に着けるものとか?』
『そうですね。
後はここに元々あるものばかりです。』
『これもだよね?』
私はコーヒーカップに指をかけた。
『ええ。』
亭主が気を使えないのか、真美が遠慮しているのか、いずれにせよここには涼子の名残が息衝いている。

