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異常性愛
第25章 おまじない
助手席で真美はコーヒーをすすっていた。
『あ、お帰りなさい。』
『お待たせ。
真美ちゃん、これ。』
店の紙袋からガサガサとカップ取り出して真美に見せた。
持っていたコーヒーをホルダーに置いて座りなおした真美は、目を丸くしてカップを眺めている。
『真美ちゃんに。』
『私に?』
『そうだよ、
真美ちゃんのカップ。
誰も使ってないよ。』
『えぇ・・・そんな。』
『ほら。』
真美は腫れ物に触るように私からカップを受取り、いろんな角度からカップを確かめた。
『すごくかわいい・・・うれしい。』
『高いものじゃない。
普段使いにいいだろ?
気にせず使ってよ。』
『だいすけさん・・こんな・・』
『あぁ、ダメダメ、
もう泣かないで。ね。
そんなつもりじゃない。』
真美の涙を受け入れるより、前を向かせてやる方が、今はいい。
自分用のコーヒーカップを買うぐらい、誰にだって普通にできる。
だが、今の真美はそんなことすらできないほど、あの家で萎縮していた。