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異常性愛
第26章 ならず者の食卓
   
『面倒だなぁ。』

『すみません。
 上役の了承がないと
 本契約書の発行が出来ないんですよ。』

『あ、そう。じゃ仕方ないな。
 真美、印鑑とって。』

仮契約書に署名する、その達筆さに驚いた。

『おじょうずですね。』

『私の歳で字の下手な者などおらんよ。
 文字はその人の顔のようなもんだ。
 字は書いても恥はかけん。ほほほ。』

その文字と言葉は、亭主が漂わせる加齢臭以上に年齢を感じさせる。
若い真美を娶ることで、抗うことのできない老いから、亭主は必死で逃げているのかもしれない。

『よし。これでいい。
 さぁ乾杯しよう。
 会いたかったぞ大輔クン。』

真美が注いだワインで私達はグラスをあわせた。

初めて亭主が私を下の名前で呼んだ。
涼子がビデオで私の名前を叫ぶシーンが、ありありと脳裏に浮かんだ。


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