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異常性愛
第28章 媒介
   
結婚して五年余り、こんなに喜ばしい事なら、もっと早く子作りに励むべきだったと思う。
少し前までの私は子を持つことなど考えもしなかった。
愛を粗末に扱い、いじけ、拗ねていた愚かな男だった。

早くに家族と決別したことで、愛に飢えることを良しとせず、それを否定し続けることで自分の意思を支え生きてきた。
気ままに女性との交際を楽しみ、特にセックスと愛を置き換え、欲望のままに時を過ごしてきた。
愛の芽生えに気付きかけると、恋愛を撤収し、その場から立ち去る事を選んだ。
愛を認めることは、それまでの私の生き方を否定するものだったからだ。

だが人との偶然の逢着(ほうちゃく)によって、私は生き方の変更を余儀なくされた。
¨見えないものは信じない、知らないものは存在しない¨という硬結した私の信条は砕け散り、私に愛という無形の情調を認めさせた。
その上、叶いそうもない生き方に憧憬を抱いてしまっていた。

そんな中で授かった新しい絆が、これからの私の生(せい)における指針になり得るかもしれない。


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