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第5章 月への道を

タクヤの妻は、タクヤが処置をされている間中泣いていた。

ユウイチに理由を聞いたが、ユウイチは答えられなかった。

タクヤは意識が戻らない限り
後の事は分からない。

タクヤはもう幸せで
りえへの執着心は消えたと思っていたのに…


ユウイチは人の心の複雑さを目の当たりにした。

ダメと分かっていても
気持ちは求めたり

同じ人間でも矛盾する気持ちを抱え苦しんだり…

自分でもら分からないうちに
勢いでとんでもない事をしてしまったり…

人の心は温かくも冷たくもなる。


弱い立場のりえを執拗に追い詰めたタクヤは許せず
最悪な自殺までしようとして許せずにいた。

そんなにタクヤを追い詰めた自分はもっと許せずにいた。

が…
許せないからと、どうしようもなく
自分も周りも幸せに暮らす事が
一番の自分への課題だとユウイチは思っていたのだ。