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第5章 月への道を

タクヤはなかなか目を覚まさない。

タクヤの妻は毎日タクヤの元に来た。

病院の玄関で新井の姿を見つけた。

新井とは数回会った事があり
新井のお店にもタクヤと出掛けた事があり知っていた。

「こんにちは。どこかお加減でも…」
タクヤの妻は新井に尋ねた。

新井は、タクヤの妻に会ってしまい
しまったと思っていた。

「知り合いが…体調を崩して…」
新井が言いかけると
「ばあば、ママ、今日は起きるかなぁ？」

双子が後ろから板前の男とやってきて
新井のところに走り寄った。

「お孫さん？」

新井は苦笑いをしながら
「はい、孫です。。すみません。急ぎますので…」

会釈をし、足早に病院の奥に入っていった。

タクヤの妻は売店で買い物をし、
病室に向かう途中、ユウイチを見つけ
タクヤの病室に向かうのかと思うと
タクヤの病室とは違う棟に行った。

タクヤの妻は何故かユウイチの後をつけると
病室に入って行った。

病室前の札を見ると自分と同じ苗字の女性だった。

「りえ…タクヤの前の奥さんだわ…まだ関係があったのかしら…」

「ママ、あのね、今日はね…お義父さんも来たよ。早く目が覚めたらいいね。僕もユウナもいい子にしてるから、早くママ、目を開けてね」

「ママ、ママ、あのね…」

二人の子供たちは懸命に話しかけていた。

新井は涙を拭いていた。

(なんの病気かしら…)
タクヤの妻はタクヤの病室に向かった。