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第5章 月への道を

タクヤが初めてりえを見かけたのは
大学生の頃で、りえを電車で度々見掛けていたのだった。

最初は母親に似ていることに気付き
見つめていたのだったが
次第に恋になっていったのだった。

りえの後をつけ、りえの会社やりえの自宅を知り
りえに近づくために同じ会社に入ったのだった。

りえは、美しく優しかった。

タクヤは小さな頃から祖母に自分の母親のことは
悪く言われていた。

父親をたぶらかし、タクヤを妊娠し、勝手に産み、勝手に死んだと…

本当のことは分からなかったが
父親は母親のことは話さなく
タクヤは自分は産まれてくるべき人間ではなかったと思い込み
自分のせいで母親は死んだとずっと心に闇となって根付いていたのだった。

りえと母親と重ねていた部分があり
優しいりえにタクヤは自分の辛さをぶつけてしまっていたのだった。

あんな目に合わせながらも
タクヤを献身的に看病し、こんなに回復するまで見捨てずにいてくれていたりえを
タクヤは感謝し、矢張りとても愛していることをりえに打ち明けた。


りえは、自分の気持ちを正直にタクヤに伝えた。

自分もタクヤが好きで、愛している。
でも、ユウイチも愛している…

どちらかに選べないし
二人とも欲しいと…

りえはしくりあげて泣き崩れた。
タクヤもりえをこんな苦しい状況に追い込んだのは自分だとりえを抱き締めた。