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マギカ☆フレグランス
第2章 指令【フィリムの目撃情報収集】


 数分間、嗚咽を漏らすメイラの背中を撫でる。
 落ち着いてきたメイラが、ごしごしと私の胸で涙を拭く。ちょっと……それ私の服……。
 顔をあげたメイラは泣き止んでいたけれど、目は真っ赤に充血していた。

「ねぇ……ルナ」
「な、なに?」

 どうしたんだろう。私のことを何度もルナと呼ぶなんてメイラらしくない。
 いつもメイラは私のことを「あんた」って呼ぶのに。

「抱いて」
「……へ?」
「前の頃みたいに、私のこと抱いて」
「だ、抱くって、その……えっちな意味の?」

 私の問いかけに、メイラはこくり、と頷いた。
 で、でも抱いてって、どうやって抱くの? ってかいつもメイラが好き勝手に私の事抱いてくるじゃん。なんでそんな受動的なこと……。
 そこで、ふと思う。今のメイラはいつも通りのメイラじゃない。どう考えても不安定で、揺れてる瞳は、不安げに私の事見つめてくる。目線が重なる。メイラの瞳は、今にも溺れそうなほど揺れていた。

 メイラは、「私」から抱いてほしいと言っている。
 いや、「ルナちゃん」から抱いてほしいと、言っている。

 メイラにとってのルナちゃんは、今どんな状況にあったとしても、私なんだろう。

 ――――『ごめんなさい……メイラ……』――――

 ――え? なに今の。
 頭に過った言葉。私の声で、いや、ルナちゃんの声で、メイラに向けていった言葉。なんのことかわからない。でも、……わかってしまう。今の言葉は……。
 昔、ルナちゃんがメイラに向かって言った言葉だ――。

 胸からなにかがこみ上げる。
 泣きそうになるような、叫びたくなるような、どうしようもない焦燥感。罪悪感。
 この気持ちは、この衝動は……私のものじゃない。
 そう、この体にいたはずのルナちゃんのものだ……。

「メイラ、おいで」

 口が勝手に動いていた。
 メイラを慰めたい。メイラを抱きしめたい。メイラを感じたい。
 そう心底思う私から出た、自然の言葉だった。
 私は寝ころんだまま、両手を開く。

「……! うんっ!」

 メイラがもう一度、私の胸に顔をうずめる。
 私は、そのメイラの頭を撫で、そっとその頭にキスを落とすのだった。

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