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妄想短編
第6章 天の先の国
ガタンガタン
「んん…?」
千夏は身体の揺れと何かがぶつかり合う音で目をさました。
見える範囲を見渡す、木で出来た天井に木の壁があった、そしてぶつかり合う音の正体は車両の揺れの音のようだ。
[ここは…貨物室?]
千夏が横になって居るのは、どうやら藁の上
混乱する頭を押さえながら重たい身体を起こす
そんな千夏の事に気づいた男が声を掛けてきた
「お!お嬢ちゃん!目が覚めたのかい?」
少し離れた場所に七十代前後の老人が座っていた。
「お嬢ちゃん身体の方は大丈夫かい?目の前にいきなり降ってくるもんだから驚いた!そのままほっとく訳にもいかんから、儂と一緒の車両に積ましてもろたよ」
そう話ながら老人は水の入った瓶を千夏に差し出した。
「あ…りがとうございます」
まだ頭の中が混乱している千夏は大した返事も出来ないまま、瓶を受け取った。
千夏が瓶の水を飲むのを確認しながら老人は、言いにくそうに口を開いた
「あ…あの…な、こんな事聞くのも非常識かもしれねーが…お嬢ちゃん…誰かに悪さを…されたんじゃねーか?」
ビクッと千夏の身体が跳ねた後、千夏はグッと拳を握る。
その様子を見て老人は確信を持った。
「そうか…すまんのぉ…嫌な事聞いて…儂の前に現れた時のお前の姿や衣服を見て、もしや、と思ったんじゃ…」
千夏は慌てて自分の身体を確認し、自分の姿を見て固まった。あの豚のような男にナイフで切られた服や肌、身体の隅々まで舐め回され、その挙げ句付けられたキスマーク、その全てが綺麗に無くなっていた。
「あぁ、勝手かと思たんだが…服や傷は治しておいた、
すまん…流石の儂でも心や記憶まではどうにもならん」
そう言い頭を下げる老人
綺麗になった自分の外見を眺めながら、涙を堪える千夏
「謝らないでください…私を拾ってくださって、その上身体まで綺麗にしてくだってほんとにありがとうございます!」
堪え切れなくなった涙が、ポタポタと千夏の脚にこぼれ落ちた。