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加虐の皇子と愛玩ドール
第6章 淫虐連鎖

 みおりの腕に、ほづみの腕が絡みついてきた。

「みおりさん」

「ん?」

「今日、助けて下さって、有り難うございました」

「別に。面倒臭くなっただけだし」

「お姉ちゃんのお店にお勤めしたら、毎日、あんな風になるんでしょうか」

「──……。雅音に念押しとく。ほづみは私のだって」

「…………」

 みおりはほづみと並んで、とっくに終電を終えた駅を通り過ぎていった。
 一駅隣のホテルで時間を潰していたのは、このためだ。ナイトイベントがお開きになる頃合いを見計らって戻るには、『Gemini』まで徒歩で帰るより他にない。

 ほづみと出逢って一ヶ月と少しが経った。

 雅音の気まぐれ、口車に乗せられてほづみを抱いた。みおりもあの時は気まぐれだった。

 だが、以来、だらだらと関係を続けている。

 みおりが特定のマゾヒストに他の人間との関係を戒めたのは、ほづみが初めてだ。そして、身体にえげつないほどの傷が入る類いの苛虐を敬遠するようになったのも、このドールが初めてだ。

 ほづみの血は美しかろう。きっとみおりはその甘美な匂いに酔う。
 白くきめこまやかな柔肌だからこそ、血のみのらず、排泄物も、きっと極上に艶やかに、その淫らな肉体を飾るものになる。

 だのにみおりは、この気高さを前にして、ほづみの身体を人間の女をメスの動物におとしめていくのと同様、愉しもうという気がしない。

 みおりは今夜、あの状況で雅音に協力しないで店を出てきた自分に、自分で一番驚いていた。ほづみほど輪姦して性的興奮がそそられる女体はありえなかろうのに、だ。

 心地好い沈黙の夜風に吹かれて、星空の光を吸った青白いビスクの横顔を視界の端に暫し歩くと、見慣れた小路に繋がる表通りが見えてきた。







──fin.
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