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加虐の皇子と愛玩ドール
第4章 懲罰指導
喨々たるオブシディアンの空に小さな真珠が浮かぶ、師走最後の木曜日の夜だ。
塙岸みおり(はなぎしみおり)は、場末の路地裏にひっそりとある行きつけのレズビアンバー『Gemini』を訪ねていた。
カウンターで、店主が一人、色とりどりのボトルやグラスの並んだ棚を背に、カクテルを調合している。星屑を気取った豆電球が暗い天井を彩る下、肉厚の観葉植物を交えて配置されたシンプルなガラス台のテーブル席に、数組の客達が散らばっていた。
「それで、ほづみとは楽しんでいる?」
みおりの前に、黄昏色の液体で満たされたロンググラスがからんと置かれた。
『Gemini』の店主、宍倉雅音(ししくらまさね)が、テーブルを挟んだ向かい側で、興味津々と言わんばかりに一重の目を輝かせていた。
卵形の輪郭に涼しげな顔、雅音の風貌は、甘ったるい砂糖で出来たドールを聯想する妹とは似ても似つかない。ネイビーのカットソーの一番盛り上がったところに、まっすぐな黒髪が流れていて、骨太な手首に煌めくスワロフスキーのブレスレットが、人口の星光を弾いていた。
みおりは、自分の着ているレジメンタル柄のブラウスの袖から覗いたレースをよけながら、シャーリーテンプルの入ったグラスを引き寄せる。
「私に報告義務はあるの?」
「私はあの子の姉だもの。妹が大事にされてるかどうか、知っておくのは務めでしょう」
「大事に……ねぇ。妹を『Gemini』の客寄せに使った悪い姉さんに、そういうことが言えるわけ?」
「私は、貴女達相性が良さそうだから、知り合うきっかけを提供しただけ。感謝してもらえない?」
「店が傾いていたのは、事実だろ」
雅音の顔に、不服そうな歪みが現れた。
『Gemini』は、一時期経営難に追い込まれた。辺鄙な立地が災いしたのだ。
みおりは、雅音の計画した『Gemini』の客足を回復させるためのイベントで、彼女の妹、宍倉ほづみ(ししくらほづみ)を聴衆の前で全裸にして辱しめた。雅音の罠にかかったからだ。
だが、みおりはそれがきっかけで、ほづみと頻繁に会うようになった。今では良好な主従関係が出来上がっている。