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加虐の皇子と愛玩ドール
第4章 懲罰指導
「ま、本当に雅音が妹思いの良い姉さんなら、君が私に感謝すべきだ。ほづみがもっとエロくなるかならないかは、私に懸かっているから」
「女を開発、調教。みおりって彼女はいないくせに、下の才能だけはあるわね」
「余計なお世話。彼女がいないんじゃなくて、いらないんだ」
たった一人の人間なんかに繋がれていたら、どれだけ美しいものが目の前を通りすぎていっても、気が付かないで一生を終えてゆくだけになろう。
みおりは、だからほづみを幾度となく抱いても、恋人と呼んだことは一度もない。
「ここに塙岸みおりという女はいる?」
突然、ひんやりした外気が吹きつけてきたのと同時に、凛としたメゾが聞こえてきた。
みおりが振り向くと、店先の、滅多に開かない木戸が全開になっていた。そして、そこに、ゴージャスな毛皮を身につけた、栗色の髪の女性がいた。
年のほどは三十代半ばといったところか。悩ましげな目許に通った鼻梁、ふっくらした唇は鮮やかなサーモンピンクの艶を帯びていて、女性の顔つきは、知性と自信とがみなぎっていた。ふさふさのコートから伸びた脚は太ももからむき出しで、鍛え抜かれた曲線美が、これでもかと言わんばかりに艶かしさを主張していた。
* * * * * * *
みおりは、見ず知らずの女性と連れたって、『Gemini』を出た。それから二十分ほど電車に揺られて、この肉感的な礼儀知らずを、自分の起臥しているマンションの部屋に招いた。
二十分間の電車の帰路は、女性の身の上話を聞くのには、十分だった。
女性は、名前を海馬しづか(かいばしづか)という。
昼間は近くの高等学校で教師をしていて、こんな挑発的な装いは疎か、スーツやロングスカートばかりを着用しているらしい。退屈な毎日をただ淡々と過ごしていた。老女や男ばかりの職場で、当然、ときめくようなこともなかった。そんなある日、どこからかみおりの噂を聞きつけて、居ても立ってもいられなくなって、今に至ったのだという。
みおりはしづかに私宅の敷居を跨がせるなり、寝室へ連れていった。しづかの用件を理解した以上、話は早い。
顔も身体も飛び抜けて好みというわけではないが、自ら虐げられることを望んで、自分を指名してきたマゾヒストには、興味がある。
みおりはしづかを部屋に通すと、後ろ手に扉を閉めて電気を点けた。