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加虐の皇子と愛玩ドール
第6章 淫虐連鎖
睦月もまもなく終わろうとしているある日の午後、街は、いよいよ迫る底冷えの気配をものともしない活気が、そこはかとなく充満していた。
マネキンがすましてポーズをとるショーウィンドウに、ビルや自家用車のガラス窓、それらが水滴の微粒子で曇るのにも構わないで、世間は、店頭に並んだチョコレートやら恵方巻やらに踊らされて、浮き足立っているようだ。
塙岸みおりは、オフィス街の一角にいた。
みおりがここを訪ねてきたのは、あるホテルグループを運営している大手企業の企画部に、商談を持ちかけるためだ。
件の会社は、初めての来訪者に対しても存分な存在感を主張した巨大なビルに、そのオフィスを設けていた。
みおりはビルのエントランスを入っていくと、受付でアポをとっていた人物の名前を告げた。そうしてこぢんまりした会議室に通されて、まもなく現れた企画部部長、苫野泉美(とまのいずみ)と顔を合わせて今に至る。
「お手許の資料が、ざっと今ご説明した当社一押しの製品です。どれも特許をとっており、今のところ類似品はありません。委託、直営店、通販をトータルして、需要数は上位に入ります」
「ご丁寧に有り難うございます。我が社の観光施設は雰囲気、サービスに定評があり、その経営方針を活かして、ファッションホテルも演出に力を入れております。このような玩具をオプションにさせていただければ、お客様には、より楽しんでいただけると思います」
「光栄です。では、契約の説明に入ります。こちらの商品はバッテリーが劣化しやすく、二ヶ月ごとにスタッフが交換に伺います。その際の費用は初回の七十パーセント、これは、仕入れというかたちでお買い上げになるよりお得です」
「待って下さい、塙岸さん」
「何か?」
「商品の良さは存じ上げました。ただ、申し訳ありません、予算が、やっぱり……」
泉美の無邪気な面差しに、たゆたった風な翳りが差した。